
人工歯根の治療期間を見通し、無理のない通院計画を立てるために
人工歯根(インプラント)の治療は、条件が合えば3ヶ月ほどで歯が入ることもあります。一方で、先に残っている歯の治療が必要なときや、骨とくっつくのを待つ期間があるため、1年以上かかることもあります1。実際に通う日は限られるため、手術の日と手術後の診察日をおさえれば、仕事や家庭の予定とも合わせやすくなります。
この記事では、はじめての受診から人工歯を入れるまでの6つのステップと、骨を補う処置(骨造成)などで期間がのびる条件をまとめました。仮歯で食事ができるはんいと、最後の人工歯で噛めるようになる時期のちがいや、歯科用CTやMEGA ISQⅡを使って骨になじんだかを確かめるしくみもご説明します。
この記事の要点まとめ
- 治療にかかる期間はおよそ3ヶ月〜1年、通う回数は3〜8回ほどが目安です。骨とくっつくのを待つあいだが、全体の長さを決めるかぎになります。
- 初診、CT検査、むし歯などの事前の治療、埋め込む手術を経て、骨になじんだのを確かめてから人工歯を入れます。
- 骨を補う処置(骨造成)や体の状態によって期間がのびることがあり、仮歯で食べられる時期と、最後の人工歯でしっかり噛める時期はちがいます。
- 人工歯根の治療期間の目安と初診から噛めるまでの6つのステップ
- 骨造成や持病で人工歯根の治療期間が延びる理由と判断の目安
- 「仮歯で食べられる」と「人工歯根でしっかり噛める」は別の段階です
- 人工歯根の治療期間を仕事や家族の予定に組み込むための判断基準
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
人工歯根の治療期間の目安と初診から噛めるまでの6つのステップ

人工歯根の治療は、全体でおよそ3ヶ月〜1年、通う回数は3〜8回ほどがよくある目安です。毎週のように通うわけではありません。手術のあとに、あごの骨と人工歯根がしっかりくっつくのを待つあいだが、全体の長さを左右します。
全体の期間は約3ヶ月〜1年、長さを左右するのは治癒待ちの時間
治療にかかる期間は約3ヶ月〜1年と幅がありますが、その大部分は処置をせずに骨の治りを待つ時間です。実際の通院は3〜8回程度にとどまり、治癒を待つ間は数ヶ月にわたり通院の間隔が空くことも珍しくありません。
そのため、お仕事のスケジュールと両立を考える際は、手術当日と術後の消毒・抜糸を行う数回の通院日に注目して予定を組むのが現実的です。抜歯した後の顎の骨がどのように変化するかによっても必要な処置や期間が変わるため2、事前の検査で見通しを立てていきます。
ステップ1〜3:初診の相談、歯科用CT検査、むし歯・歯周病の事前治療
治療の前半は、お口の状態を把握し、外科処置に向けた環境を整える段階です。まず初診でお困りごとやご希望を伺い、お口全体の検査を行います。
検査では、歯科用CTを用いて顎の骨の厚みや高さ、神経や血管の位置を立体的に把握し、口腔内スキャナー(iTero)で歯並びや噛み合わせを記録します。私は「歯科治療は原因を除去することが、治癒の始まり」と考えています。むし歯や歯周病が見つかった場合は手術の前に治療を行うため、その有無によって手術に進める時期が前後します。
ステップ4〜6:埋入手術、骨との結合を待つ期間、人工歯の装着とメンテナンス
後半は、人工歯根を埋め込み、上にかぶせる人工歯を入れて、それを保っていく段階です。人工歯根を埋め込む手術のあとは、1〜2週間ほどで抜糸や治りぐあいを見る診察をします。
その後、骨と人工歯根が結合するまで約3〜6ヶ月の治癒期間を置きます3。待つ期間の長さは、骨の量や状態、骨造成を行うかどうかによって変わります。結合を確認したのち、型取りとアバットメント(土台)の装着を経て人工歯を装着しますが、土台を装着する時期や手順には複数の進め方があり、状態に応じて選択されます4。装着後は定期的なメンテナンスへ移行し、ここからが「お口の健康維持の始まり」となります。
| ステップ | 主な内容 | 期間・回数の目安 |
|---|---|---|
| 1. 初診・カウンセリング | 困りごとや希望の聞き取り、お口全体の確認 | 1回 |
| 2. 精密検査・治療計画 | 歯科用CTや口腔内スキャナーでの検査、計画の説明 | 1〜2回 |
| 3. 事前治療 | むし歯・歯周病の治療、抜歯など(必要な場合) | 数週間〜数ヶ月 |
| 4. インプラント埋入手術 | 人工歯根の埋め込み、術後の消毒・抜糸 | 手術1回+術後診察1〜2回 |
| 5. 治癒期間(結合待ち) | 骨と人工歯根が結合するのを待つ期間 | 約3〜6ヶ月(通院は月1回程度または無し) |
| 6. 人工歯装着・メンテナンス | 型取り、土台と人工歯の装着、その後の定期検診 | 装着まで2〜3回、以後3〜6ヶ月ごと |
上記は一般的な流れであり、お口の状態や選択する術式によって通院回数や期間は変動します。
骨造成や持病で人工歯根の治療期間が延びる理由と判断の目安
顎の骨の量が足りない場合や、全身の健康状態によって傷の治りに時間がかかる場合は、通常よりも治療期間が長くなります。事前の検査で骨の厚みや全身状態を確認することで、追加の処置が必要かどうかを判断できます。
奥歯を抜いた後に骨がやせる仕組みと、骨造成が必要になる目安
歯を失うと、噛むことによる刺激が顎の骨に伝わらなくなり、骨が少しずつ吸収されてやせていきます2。特に奥歯の骨が溶けてやせてしまうと、人工歯根を支えるための骨の厚みや高さが不足するだけでなく、お顔の輪郭として頬がこけて見える変化につながる場合もあります。
骨造成(骨を補う処置)が必要かどうかは、歯科用CTで計測した骨の幅や高さ、上顎洞(鼻の横にある空洞)や下顎の神経までの距離を基に判断します。なお、抜歯後の骨の吸収を抑えるために、抜歯と同時に骨を保つ処置(ソケットプリザベーション)を行う方法も研究されており、将来の埋入に向けた選択肢となります2。
骨造成を同時に行う場合と、先に行う場合の期間の違い
骨を補う処置には、不足した部分に人工の骨材などを足すGBR(骨誘導再生法)や、上顎の奥歯の骨を補うサイナスリフト・ソケットリフトなどがあります。骨の不足がわずかであれば人工歯根の埋入手術と同時に行えることもあり、その場合は治療期間が大きく延びないこともあります。
一方、骨の不足が大きい場合は、先に骨造成だけを行い、骨ができるまで数ヶ月待ってから埋入手術へ進むため、全体の期間が延びて通院も数回増えます。また、長期的な安定のために人工歯根の周りの歯ぐきの厚みを補う処置を組み合わせることもあり、これも行う時期によって計画が変わります5。半年後に大切な食事会などの予定がある方は、その時点で「仮歯の段階」か「最終的な人工歯の段階」かを見通すためにも、早めの検査が役立ちます。
ポイント
骨造成を埋入手術と同時に行えるか、先に骨を作って数ヶ月待つ必要があるかによって、治療全体の期間は大きく変わります。
糖尿病・服薬・喫煙がある方が治療前に確認しておきたいこと
体の持病や生活のくせも、治療の期間や進め方にかかわります。たとえば糖尿病で血糖のコントロールが落ち着いていないときや、たばこを吸う習慣があるときは、手術へ進める時期や進め方の判断が変わります。そのため、前もって体の状態を確かめてから日程を決めていきます。
また、骨粗しょう症の薬や、血をさらさらにする薬を飲んでいる方も、手術の前に気をつけたい点があります。どちらのお薬も自分の判断でやめず、処方している主治医と相談したうえで進め方を決めます。
はじめての受診のときは、いまかかっている病気の名前、飲んでいるお薬の名前(お薬手帳)、1日にたばこを吸う本数を歯科医師へお伝えください。主治医とやりとりをしたり、前もってたばこをやめる期間をつくったりすることで、治療を始めるまでの日程が変わる場合があります。
「仮歯で食べられる」と「人工歯根でしっかり噛める」は別の段階です

治療の途中で仮歯が入ったとしても、顎の骨と人工歯根の結合が完了するまでは強い力をかけられません。普段どおりにしっかり噛めるようになるのは、骨との定着を確認し、最終的な人工歯を装着したあとになります。
仮歯を入れられる条件:即時荷重・抜歯即時埋入と1回法・2回法の違い
手術のすぐあとに仮歯を入れる即時荷重や、歯を抜くのと同じ日に人工歯根を埋め込む抜歯即時埋入は、あごの骨の量が足りていて、埋め込んだときの固定の強さが基準に届いているときにだけ考える方法です。だれにでも行えるわけではありません。
また、手術の進め方には、歯ぐきから土台の一部を出して終える「1回法」と、いったん歯ぐきを閉じて治癒後に再び小さな処置を行う「2回法」があります。骨造成を併用する場合などは感染予防の観点から2回法が選ばれることが多く、特に奥歯1本の欠損では、見た目の影響が前歯より小さいため、治癒期間中に無理に仮歯を入れず歯がない期間を設けることもあります。
治癒期間中に食べてよいもの・控えたいもの
手術直後の数日間は、出血や腫れを防ぐため、飲酒や激しい運動、長時間の入浴を控え、食事は手術をしていない反対側の歯で噛むようにします。おかゆやうどん、豆腐など、あまり噛まずに飲み込める柔らかい食事が適しています。
抜糸が終わり仮歯が入ったあとも、治癒期間中はせんべいやナッツ類などの硬い物、お餅やガムのように粘り気が強い物を手術した側で噛むのは控えてください。職場の昼食やご家族との外食では、小さく切ってある料理や煮込み料理を選ぶと周囲に気を使わせずに食事がしやすくなります。こうした食事の配慮がいつまで必要かは、骨との結合状態によって決まります。
歯科用CTとMEGA ISQⅡで定着を確かめてから最終的な人工歯へ進む仕組み
最後の人工歯へ進む時期は、「手術から何ヶ月たったか」という日数だけでは決めません。骨と人工歯根がどのくらいしっかりくっついたかを数字で確かめる機器として、MEGA ISQⅡがあります。
これは共振周波数分析によって人工歯根の安定度を測る機器で、数値(ISQ値)の推移を見ながら型取りや負荷をかけてよい時期を判断します。歯科用CTでの立体的な骨の確認も組み合わせ、もし治癒が予定よりゆっくりであれば、待つ期間を延ばす判断をとります。土台の装着時期や手順による経過の違いも報告されています4。
人工歯根の治療期間を仕事や家族の予定に組み込むための判断基準
治療計画を立てる際は、期間の短さを優先するのか、それとも感染の起きにくさや長期的な安定を優先するのかによって選択が変わります。ご自身の仕事の繁忙期やご家族の行事と照らし合わせながら、無理のない日程を組むことが大切です。
期間の短さを選ぶか、長く安定して噛めることを選ぶか
歯を失ったときの治療法として、ブリッジは両隣の歯を支えにして被せ物を固定する方法で、本数によって通院回数や期間は変わります。部分入れ歯も含め、人工歯根よりも短い期間で形になることが多い方法です。ただし、ブリッジは両隣の健康な歯を削る必要があり、部分入れ歯は金具の違和感や噛む力の面で制約が生じることがあります。
残っている大切な歯をなるべく「削らない」「抜かない」という考え方に立つと、周囲の歯に負担をかけずに独立して噛む力を受け止める人工歯根は有力な選択肢となります。即時荷重などで期間を短縮する方法もありますが、骨造成や十分な治癒期間を確保することは、将来にわたって安定して噛める環境づくりにつながります。
ポイント
治療期間の短さだけでなく、残っている健康な歯への負担や長期的な安定性を並べて検討することが、納得のいく選択につながります。
月末の繁忙期を避けた手術日・術後診察の組み方
お仕事で月末などの繁忙期が決まっている場合は、そこから逆算して手術日を設定します。手術の翌日・翌々日は腫れや違和感が出ることがあるため、休養を取りやすい週末の前や、仕事が落ち着いている時期を選ぶのが一つの方法です。
手術から1〜2週間後に抜糸や経過観察の診察が入るため、この2週間は抜糸の通院日を確保できるよう予定に余裕を持たせておくと無理がありません。その後の治癒期間(約3〜6ヶ月)は通院間隔が大きく空くため、仕事の忙しい時期と重なっても受診の負担は少なくなります。
半年後にご家族の進学祝いなどの会食がある場合、骨造成が不要で、むし歯などの事前の治療も少なければ、最終的な人工歯の装着まで進められる可能性があります。一方、骨造成が必要な場合は、その時点では仮歯や治りを待つ段階になる可能性があるため、前もって計画を立てておくことが欠かせません。
奈良市のM.DENTAL OFFICEで相談時に確認しておきたいこと
歯科医院で相談する際は、以下の項目を確認しておくとスケジュールが具体化しやすくなります。
- 骨の状態と、骨造成がいるかどうか:CT検査の結果から、期間がのびるかどうか
- 治療中に仮歯を入れられるか、何を食べられるか:歯がない期間があるか、外食のときに気をつけること
- 手術の日と、手術後の診察の日程:休みを取りたい日と、通う回数の見通し
- 治りが長引いたときの進め方:予定している行事までに、どこまで進められるか
- 費用の合計と内わけ:検査、手術、骨造成、仮歯、人工歯、メンテナンスのどこまでが入っているか
なお、人工歯根の治療は健康保険がきかない自費の治療で、よく見られる費用の目安は1本あたりおおむね30万〜45万円程度です。この金額は一般的な目安で、当院の費用ではありません。実際の費用は医院や骨造成をするかどうかで変わるため、診察のときにおたずねください。
また、手術をともなうため、手術のあとの腫れ・痛み・出血や、骨とうまくくっつかないこと、治療後のインプラント周囲炎などのリスクや副作用があります。装着したあとも、定期的なメンテナンスが欠かせません。
奈良市にある当院は新大宮駅より車で約6分(駐車場9台)に位置し、プライバシーに配慮した完全個室の診療室とカウンセリングルームを備えております。大型モニターで検査資料をご覧いただきながら説明を行っておりますので、「痛む前から歯科医院に行く」という一歩として、まずは現在の骨の状態や治療期間の見通しについてご相談ください。生きていく基本である「食」を支え、お口の健康から笑顔あふれる毎日につながるよう、一人ひとりのご予定に寄り添った治療計画をご提案いたします。
よくある質問
Q. 治療中に歯がない期間はどのくらいありますか?
A. 奥歯の治療では、骨と人工歯根がくっつくまでの約3〜6ヶ月のあいだ、むりな力がかからないように仮歯を入れず、歯がない期間をつくることがあります。一方、前歯など見た目にかかわりやすい場所や、骨の量や固定の強さが条件に合うときは、手術の当日や抜糸のあとに仮歯を入れられることもあります。ご自身の歯の場所で仮歯が使えるかは、くわしい検査のときに歯科医師へおたずねください。
Q. 手術の翌日は仕事を休む必要がありますか?
A. 一般的には、デスクワークであれば手術の翌日から出勤できることが多いとされます。ただし、麻酔が切れたあとの痛みや、翌日〜3日目頃にピークを迎える腫れが出る場合があり、骨造成を併用した際は症状が強く出やすくなります。体を動かすお仕事や大切な商談がある場合は、手術当日と翌日に休養を取れるよう日程を組むと無理がありません。
Q. 抜歯したあと、どのくらい期間を空けてから相談に行けばよいですか?
A. 歯を抜く前か、抜いてすぐの早いうちにご相談いただくことをおすすめします。抜いたあとのあごの骨は時間がたつにつれて少しずつやせていくため2、そのままにする期間が長いほど骨造成が必要になりやすく、治療が長引くもとになります。傷が治るのを待つあいだに、くわしい検査や治療計画づくりを進めることもできますので、早めにご相談ください。
参考文献
1. 口腔インプラント科 | 福岡歯科大学医科歯科総合病院. https://h.fdcnet.ac.jp/sinryoka/dentistry/implant
2. Atieh MA, Alsabeeha NH, Payne AG et al. Interventions for replacing missing teeth: alveolar ridge preservation techniques for dental implant site development. The Cochrane database of systematic reviews. 2021. PMID: 33899930 / DOI: 10.1002/14651858.CD010176.pub3
3. インプラント歯科|昭和医科大学歯科病院. https://www.showa-u.ac.jp/SUHD/department/list/implant/
4. Nunes M, Leitão B, Pereira M et al. Final Prosthetic Abutment Insertion Time (One-Time Abutment Insertion Protocol Versus Conventional Protocol) and Related Outcomes: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials with Meta-analysis. The International journal of oral & maxillofacial implants. 2025. PMID: 40198089 / DOI: 10.11607/jomi.11221
5. Cafasso E, Baima G, Campagna A et al. Soft Tissue Augmentation Around Dental Implants: Techniques, Timing, and Comparative Efficacy-A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Journal of periodontal research. 2026. PMID: 41858220 / DOI: 10.1111/jre.70100
広島城北高校(’90卒業) バスケットボール部
大阪歯科大学(’97卒業) 硬式庭球部
大阪歯科大学臨床研修医(1年間)
鴫野山田歯科医院(’98.4~)
奈良学園前山田兄弟歯科(’99.9~)結婚と同時に奈良県民となる
2016年5月 奈良市柏木町にてM.DENTAL OFFICE 開院
2004年 ハーマンズ東京包括歯科臨床コース(筒井昌秀、照子先生)
2005年 筒井塾 咬合コース
2006年 阿部晴彦 総義歯セミナー
2011年 大村メソッド
2013年 南清和先生コース
2016年 スーパーペリオ塾
2017年 GDS総義歯コース
2022年
FIDIハンズオンセミナー
(メガジェンインプラント)
2023年 CSTPC福岡コース
2024年 ODGC(矯正診断コース)
日本審美歯科協会
日本臨床歯周病学会
日本包括歯科臨床学会
神戸ケアクラブ
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